
黒の表現力がさらに向上したD-ILAプロジェクター上位機
DLA-HD100はフルHD仕様のD-ILAプロジェクター。HD1の上位機ではあるが、ボディや光学系、映像デバイスなどを共用し、価格もHD1に近い84万円であるため、バージョンアップモデルという見方があるのも事実である。
しかしながら、そのグレードアップぶりはめざましいものがある。ネイティブコントラストは15,000対1から30,000対1へと倍増。あわせて赤を中心に色域を広げ、SMPTE HDTV規格の170%に及ぶ色表現を実現。明るさを700ルーメンから600ルーメンに落としたのは、不要な眩しさを抑え、階調再現と色再現を優先した画づくりだからだ。
0.7インチのD-ILAデバイスは改良タイプで、HD1でやり残したことを徹底的に詰めている。素子の表面もまだ精度を高める余地があった。画素の平坦化である。画素どうしのギャップもそのエッジをさらにスムーズにし、レンズへの光漏れも抑えている。培ってきたD-ILAのノウハウを余すことなく投入した。デバイスと画づくりは車に例えるなら両輪であり、それをどこまで根気よくやり抜くかで映像のパフォーマンスが決まるのだ。
画質調整では、グラフィカルにガンマ曲線を表示し、カスタムで動かせるガンマ調整が新機軸である。特にダーク階調は細かく、グレースケールを見ながらじっくりと追い込めるのが素晴らしい。さらに、これを保存することも可能だ。実際にこの機能は効果的で、シネマ系ソースのデリケートなフィルム階調を出すのに重宝した。さらにパソコンとの連動で、ポイントそのものをもっと細かくセットできる。HD100のユーザーなら、そこまで試してみたいものだ。
このクラスになると操作面もより快適さが求められよう。電動ズーム、電動フォーカスもHD100になってからの採用だ。その他、ジェナムの映像チップは引き続きの搭載。HDMIはバージョン1.3aを2系統搭載。さらに、小さい工夫だが、横幅の太いHDMIケーブルが接続しやすいように端子間を広げている。
HD1と比較するとさらに黒側がぐんと沈む傾向。漆黒の黒をベースにじっくりと低輝度シーンの陰影が描かれ、ノイズやざらつきのない緻密感あふれる描写は手放しで美しいと感嘆する。『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(BSデジタル放送の録画ソース)は宇宙の暗黒をバックに、精密な空母の船体が浮かび上がり、ダイナミックさと立体感が秀逸だ。『007/カジノ・ロワイヤル』(BD)は飛行場の夜景がしっかりとしたコントラストで描かれ、光や色合いを力強く描写。ボンドガールの肌や衣装の質感も、階調豊かで見応え十分。「記憶の棘」(DVD)はプロジェクター側で1080pにアップスケーリングして視聴したが、少し色を抜いたようなソフトなタッチが作品とマッチし、気品ある雰囲気を醸し出す。ダイナミックレンジに余裕があることがあらゆるソース、またシーンでも感じられ、HD1で時折感じたようなどこか力の入った感じがしないのもよい。
黒はテンションをはらず、どこまでも滑らか且つ、柔軟で陰影の表情が深い。ハイライトは、つっぱり感のないすっきりとした伸び。炎のような微妙な揺らぎも、アイリス動作とは無縁ゆえに、まったく落ち着き払ったもの。ずっと観ていたくなるような疲労感のない映像が存在する。非常に完成度の高いプロジェクターである。
(text:林 正義)

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